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PSP版 英雄伝説ガガーブトリロジー 朱紅い雫

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クリアしての感想

一番驚いたのは、やっぱりロード時間が、予想を上回るほど良くなっていた点かな。一番広いヴァルクドの町では少し待つこともあったけど、他はほとんど先読みだけでまかなえてた。ディスクの回転する時間も短くなっていたと思う。手に持っていた感触では半分くらいの短さに感じた。

白き魔女と違って、windows版の忠実な移植。キャラチップが違ったり、モンスターが変わったりすることはなかった。
音楽はアレンジされていたし、別の曲に差し替えられていたところもあった。聞けないような曲は、私はなかったかなぁ。ランティスさんには真剣に全曲集を出していただきたいと願うな。

オープニングアニメが変わった点は賛否両論あるだろうけど、windows版のオープニングのアヴィン達が格好良かったかというと、割と陰気くさい顔をしていたような記憶があるので、PSP版でもいいや。(背景とかのクオリティでは、PSP版は遠く及ばないが。)
作画スタッフは新旧両方のキャラデザインを参考にしていたようで、ミッシェルさんはまんま旧作顔だったかと。ダグラス、アルチェムなんかはwindowsのポーズだった。某再会シーンSは、なかなか妖しく・かわいらしくて良かったですよ、ええ。

キャラクターのバストショットは凄かった。大変な仕事だっただろうな~と思う。描かれた岩崎さんももちろんだけど、各シーンごとにセリフごとに、その中のどの絵を表示させるのか決めていった人にはおつかれさまですと言ってやりたい。ほぼ違和感なく、キャラクターの喜怒哀楽を楽しませてもらった。欲を言えば、第2章までのマイルにもっと明るそうな表情を使って欲しかったかな。

PSP新要素の【年表】だが、拾うのが難しくなっているように思った。ごく短時間だけ年表マークの付いているNPCがいたり、1回きりしか入れない場所の分岐の先に年表要素があったり。コンプリートへの道は険しそうだ。

もう一つの新要素【エクストラシナリオ】は、私は期待しすぎたかもしれない。使えるキャラクターたちは十分に魅力的だったが、肝心のシナリオという奴がひどい。ひどいというか、単純にうろうろしている雑魚敵を倒しながら進んでいくとボスがいて、そいつを倒したらクリアというだけの物だった。こんなのただのステージでシナリオなんて言わないだろう。
これはもう、倒すことではなく、どんなパーティが組めるかを楽しむ物だと割り切った方が良いのだろう。それにしたって、倒し甲斐のある敵がいてこそのエクストラだと思うのだが。
もっと地獄のロードだと勝手に思っていたこちらが間違いなのだけど。

育成要素の加わった【ペットシステム】だが、一周目はこれを全く初期状態のまま終わらせてしまった。結果、拾ったアイテムはほんの5~6種類だったが、拾った数はかなりのもので、道具屋にはもっぱらこれを売りに行っていた気がする。
あと、ペットはやはり自分で選べた方が良い。一番たくさん話し掛けたペットになるのかなぁ。その辺りの条件が分かると良いのだが。

必殺技、特殊技は活用させてもらった。
白き魔女の戦闘では、キャラの行動パターン決定のときに×ボタンを押せば初期設定を自動実行してくれたが、雫では入力必須になった。どうせ入力しなくちゃいけないなら、強力な技、格好いい技を使いたいものである。
windows版の特殊技能が適度に加工されていた。一番押しはやっぱりミッシェルの「B・アセンション」かな。エフェクトはきっちり上級版「リ・カルナシオン」だった。破壊力ではガウェインの「メテオブレイカー」、ダメージ範囲の広さではアヴィンの「ストライクソード」が使えた。
アルチェムの「風の子守歌」は別の意味で最強だった。彼女らしくて良かったです。
ルキアスの技に「滅-ホロビ-」があれば良かったのにな~。

武器・防具・アイテムなどだが、供給過剰に感じた。これは、windows版がどのくらいお手盛り状態だったか記憶にないので、PSP版だけの問題ではないのかもしれないが。
少なくとも、ペットが基本的な回復薬を拾ってくるので、街道の宝箱に回復薬が入っていても有難みを感じなかった。
第4章のヴァルクドで売られている武器防具には、本来レアな物も含まれているように思った。ただしこれは、ラスボス戦の難易度を考慮しての調整なのかもしれない。問題を投げかけている割りに、その武器屋で四苦八苦して装備の調整をしたのも事実なのである。

さて、ストーリーだが。

PSP版の感想の前に、説明しておきたい流れがある。
私は'96年の「旧版4」を遊び、後から'00年の「新版4」を遊んだ人間である。
サイトのあちこちで書いているが、「旧版」と「新版」は全然別のゲームと言っていいほど作り替えられている。だが、当時その事実は、事前に公表されたもろもろの記事からは、はっきりとは伺い知れなかったのである。→新版の事前ニュースページ(ブラウザバックで戻ってきてくださいませ。)

予測できなかったものだから、旧版のストーリーに若干の味付けをされた程度の物が遊べるだろうと思っていた。そんな意識(と若干の不安)を持ったままプレイに突入して、獣車襲撃事件まではそれなりにじっくりと町の人に話し掛けたりしながら遊んでいたのである。
だが、 獣車襲撃事件の顛末は全く旧版と異なるものだった。
あらすじは同じだが大幅に肉付けされている、と思っていたストーリーが、実は、あらすじから異なる根本的に見直されたストーリーだったのだ。

ここを境に、私のプレイはストーリーの本道だけを追うものになり、1回クリアして二周目に挑戦をしたものの、再び獣車襲撃事件を見たところで進まなくなってしまったのだ。
サイトに詳細なwindows版(新版)の感想を書くこともなかった。今思うと書けなかったのだとわかる。書いたらどうしても比較してしまう。見たかった物が見れなかった事への不満が噴き出してしまう。
新版も単体では面白い話でありゲームであるのだ。片方を懐かしむばかりに攻撃対象にしたくはなかった。
だから、PSP版の発売は嬉しかったのである。
PSPのスペックで旧版移植はあり得ず、もう一回新版を遊べるであろうこと。
またダメージを受けたとしても、「キャラのバストショットが見たかったんだもん。」と言い訳できることが大きかった。

前置きはこのくらいにして。
本当に作り替えられていたんだなーというのが、5年ぶりにプレイした感想だった。新版で追加された「絆」というテーマに沿い、強化された兄と妹のつながり。友とのつながり。より深みを増したパーティキャラの面々とのつながり。
旧版のアヴィンが背負っていた修羅に落ちかねない状況を、一手に引き受けた形になったマドラム。
一方で、女々しくなってキャラクターの存在感が小さくなったルティス。三部作の状況説明をやらされる羽目になったベリアス。アヴィンとマドラムの関わりでお役御免になって、なんだか都合良く使われていた感のあるミッシェル。
シリーズをまとめるというのは、簡単ではないんだろうけど、そして多分、旧作の方がそういうまとめのための種を仕込んでいなかったのだろうけど、でも、なんとかしてまとめきろうとする程、世界は矮小になり輝きや広がりを失うんだと思った。
同じエル・フィルディンでありながら、新版からは町の人々の息吹が聞こえてこない。描かれてはいるのだ。だが、プレイヤーとしてそれを自分で追体験することは出来なかった。

こういうのを「ゲームが違う」と表現して良いのではないだろうか。
「旧版」と「新版」はゲームが違う。遊びどころが違うのだ。
アヴィンの初期パラメータをいじれ、魔法も選べ、最初の町にすでに最強武器が売られ、どこへでも行けた「旧版」。
定められた道を歩き、数奇な運命に共感し、嘆き、笑い、叱咤し、共に大団円を迎える 「新版」。
違うゲームを比較することに意味はない。
ただ、はっきりと認識しただけである。楽しく遊ぶことは出来たけれど、憧れる世界はここではなかったと。

三部作の真ん中としては、良い位置にあると思う。白き魔女で撒いた「大神官オルテガの過去」「海の英雄キャプテントーマス」という種は、ここで芽を息吹く。
遺跡の壁に描かれた物に見覚えがあったり、賢者達はガガーブ世界の発祥になにがしかの知識を持っていたり。
そして。
そんな世界の成り立ちや大きなうねりに巻き込まれながらも、アヴィンの瞳はただ自分の大切な人たちだけに向けられていたこと。それは変わらない。
変わらないからこそ、「ちーがーうー」と文句垂れながらも最後まで遊べるんだと思う。
そういう冷静さも持てた。
PSP版の一番の収穫は、案外この辺りにあるのかもしれない。

2005/6/26 記

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