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Fanfiction 二次創作 封印の地|ミッシェルの訪れ

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ミッシェルの訪れ

来夏さんからのいただきものです。おねだりして公開させていただきましたv

うたた寝をしていたアヴィンの耳に、ドアをノックする音が聞こえた。
「……開いてるよ」
眠気に勝てず、アヴィンは顔を上げないまま答えた。しばらくして、誰かがドアを開けて入ってくる気配。それに続いて聞こえてきた、微かに笑いを含んだやさしい声。
「少し、無用心ではありませんか?」
驚いて顔を上げたアヴィンに、その人物は笑顔で言う。
「久しぶりですね」
「……ミッシェル……さん?」
その人物──ミッシェルは、ええ、と頷いた。
「……夢……じゃないよな?」
「夢ではありませんよ。その証拠に……」
ほら、とミッシェルの手がアヴィンの頬に触れた。そのあたたかい感触に、ようやくアヴィンは笑顔になる。
「信じてもらえましたか?」
アヴィンは頷くと、いきなりミッシェルに抱きついた。
「おっと」
少しバランスを崩しながらも、ミッシェルはしっかりとアヴィンを抱きとめた。ミッシェルのあたたかい胸に頬を埋め、アヴィンはつぶやくように言った。
「会いたかった……ずっと」
「それは私も同じですよ。今回、たまたまトーマスとこちらの世界に来る用事があったものですから、ちょっとだけ無理を言って、時間を作ってもらったんです」
「そうだったんだ……。じゃあ、トーマスにも感謝しないといけないな」
「感謝するのはいいことですが……トーマスなら、お礼にアイメルさんとデートさせろ、なんて言い出しかねませんよ」
「……それはまずいな。じゃあどうしよう……」
真剣に悩みだしたアヴィンの様子に、ミッシェルは笑みをうかべた。
「今、あなたには大切な人がたくさんいるんですね」
「ああ。アイメルにルティスにマイル、それから旅で知り合ったみんなも、俺にとってはみんな大切な人だ。でも……」
ミッシェルの腕の中で、アヴィンは顔を上げた。
「でも、何です?」
「できれば、ミッシェルさんにもその中にいてもらいたい……」
ミッシェルは、わずかに頬を染めたアヴィンの頭を軽くなでた。
「そうできたらいいのですけどね。ただ、私も忙しい身ですから……」
「……今もトーマスが待ってるんだもんな。そういえば、ここにはいつまでいられるんだ?」
「ずっと、と言いたいところですが、そういうわけにもいきませんね。次の予定がありますから。……そうですね、長くても明日の昼までというところでしょうか」
「そうか。無理は言えないよな」
「すみません、もう少し時間のある時にすればよかったですね」
「ううん、いいよ。会いに来てくれただけでも、十分うれしいんだからさ」
そう言って笑顔を見せたアヴィンに、ミッシェルはほっとした。
「それなら……私も、あなたに質問したいですね」
「俺に?」
「ええ。私がいる間、誰も……特にマイル君ですが、ここにやってこないという保証はできますか?」
「……あ、ああ。マイルはおじさんとフィルディンまで出かけてるんだ。帰ってくるのは明日の夕方になるって言ってたから大丈夫だよ」
「アイメルさんや、ルティスさんは?」
「ミューズに呼ばれて、今週末まで城へ遊びに行ってる。公務なんて退屈なだけだから、話し相手になってくれってさ。アルチェムやシャノンまで呼ばれてるみたいだけど」
それを聞くと、ミッシェルは苦笑した。
「……あの方らしいですね。どうやら、こちらの人たちは何も変わっていないようだ」
「ああ、俺も含めて、な」
「うらやましいですね。私は、あなたへの想いが積もりすぎて、自分がおかしくなってしまうんじゃないかと思いましたよ」
「ミッシェルさん……」
「会えなかった分の想いを、うまくあなたに伝えることができたらいいのですけどね」
ミッシェルは、アヴィンの背中に回した腕に力をこめた。アヴィンはいたずらっぽく笑うと、そんなミッシェルの顔をのぞきこんだ。
「……それなら、簡単な方法があるじゃないか」
「簡単な方法、ですか?」
「こうすればいいんじゃないか?」
アヴィンは、ミッシェルにそっと顔を近づけると、唇を重ねる。突然のことにおどろくミッシェルに、アヴィンは頬を赤らめて笑った。
「……な?」
「そうですね。……少し、難しく考えすぎていたみたいです」
ミッシェルはやさしく微笑むと、アヴィンの頬を両手で包み込んだ。
「じゃあ、教えてあげますよ。私が、どれだけあなたのことを思っていたか……」
ミッシェルの真っ直ぐな眼差しに頷いたアヴィンは、静かに目を閉じた。


 あとがき~from 来夏さま~
……これからというところで終わりにしちゃいました。
ここから先を期待されていた方、本当にごめんなさい。
でも、この先はみなさん同じ展開を想像されますよね?
だからあえて書く必要もないかな、と思ったんです。
それにこういう意地悪な終わり方が好きなんです(鬼)。

ここまで書いたら信じてもらえないかも知れませんが、
予定では、こんなに甘くなるはずじゃなかったんです。
特に後半部分は、必死に言い訳しながら書いてました。
「マイルごめん、君を裏切ったわけじゃないんだ~!」
って(私の本命は「マイル×アヴィン」ですからね)。

そんなこんなでなんとか完成したこのお話、少しでも
楽しんでいただければうれしいです

素敵なお話でしょ!(^-^)
舞い上がってしまったカモミールでしたが、ラストまで読んで茫然!
こんなところで終わるなんて、鬼だ~!と叫んでしまいました(笑)。
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