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Fanfiction 二次創作 封印の地|ミッシェルさんの朝寝坊

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ミッシェルさんの朝寝坊

表サイトの20000ヒットのお祝いに、来夏様より頂きました。


ミッシェルさんがこの家で朝を迎えるのは、まだ数えるほどしかない。
それは、ここに来たその日の夜に帰ってしまったり、翌日まで一緒にいられても、それが別の場所だったりするからで。
だからそんな日はすごく貴重だったりするんだ。

そして、今日がその貴重な一日。

「ミッシェルさん?」
隣で穏やかな寝息をたてているその人の肩を、軽く揺らしてみる。
朝はなかなか起きられない俺が、すんなり起きられる時間。
きっとミッシェルさんにとっては、珍しいくらいの寝坊なんだろう。
でも、ぴくりとも動かないその表情に、起きる気配はまったくない。
しばらく考えて、俺はそっとベッドを抜け出した。
素足に触れる床はまだ冷たく、でもそれが熱い身体には心地よかった。
「まだ起きないのか?」
振り返り、もう一度声をかけてみても、反応はない。
ベッドに肘をついて、その顔をのぞき込んでみる。
普段の彼からは想像もできないくらい無防備な表情。
そして、眠りの深さを証明するような、規則正しい寝息。
(……これじゃ当分起きそうにないな)
肩をすくめてベッドから離れる。
上着を羽織りながら、これからどうしようかと考える。
きっと疲れているんだろうし、ずっと寝かせておいてやりたい、と思わないわけじゃない。
でも、こうやって一緒にいられる時間はめったにないんだ。
わがままかもしれないけど、話したいことはまだたくさんあるし、それに……せっかくだからもう少し甘えさせてほしい。
「……飯でも作るか」
大きく背伸びをして、そうつぶやいてみる。
食事の支度ができたらまた起こしにくればいいし、それより先に彼が起きているかもしれない。
昨日の夜から何も食べていないわけだし、ミッシェルさんもきっと腹が減っているだろうから。
自分で考えたそんな理由にうんうんと頷きながら、俺は寝室を出た。


目覚めた理由は、目を閉じていてもわかるくらいのまぶしい日差し。
目は閉じたままで、手だけでアヴィンが寝ているはずの場所を探る。
だが、手に触れるのは冷たいシーツだけ。
(おや……?)
まぶしさに顔をしかめながらも目を開け、ゆっくりと首をめぐらせる。
やはり、そこにアヴィンの姿はなかった。
そのかわりに漂ってきたのは、パンか何かを焼いたような香ばしい匂い。
(食事を作ってくれているのですね)
起きたばかりの寝ぼけた頭でそこまで考えて、また目を閉じる。
きっと食事の支度ができたら起こしに来てくれるだろうから、それまではゆっくりさせてもらうことにしよう。
そう考えて、またうとうととしかけた時。
「ミッシェルさん、まだ起きてないのか?」
肩を揺する手と、どこか呆れたような声。
その声に目を開けようとして、ふと思いとどまる。
(このまま、寝たふりをしてみましょうか)
半分思いつきのそんな考えは、密かな、それでいて楽しいたくらみ。
笑い出してしまいそうになる気持ちを抑えてじっとしていると、予想通りその声はだんだん困り果てたものに変わっていく。
「ミッシェルさん、起きてくれよ。せっかく作った飯が冷めちまうじゃないか」
その声に、涙が混じっていたと思ったのは気のせいだろうか。
(……これ以上は、可哀想ですね)
しかし、目を開けるよりも早く、胸に感じた軽い圧迫感。
そしてそれが何かを理解する間もなく、しかたないな、という言葉と共に唇に押しつけられた、温かく柔らかいもの。
驚いて目を開けると、鼻先がふれそうな距離で、照れくさそうに見つめてくる瞳と目が合った。
「やっと起きたな」
その瞳の近さと、さっき押しつけられたものを理解したことで、心臓が情けないくらいに大きな音をたてはじめる。
この音がアヴィンに聞こえるはずもないが、照れくささを隠そうと、やはりあわてた口調になってしまう。
「アヴィン、今……」
「だって何度声かけても全然起きないからさ。でも、これで目が覚めただろ?」
「覚めたことは覚めましたが……」
(あまり心臓にいいとは言えない起こしかたですね)
苦笑混じりにため息をつくと、アヴィンも軽く笑う。
「早く来てくれよ。俺、向こうで待ってるから」
そう言って身体を起こしかけるアヴィンに笑い返して、その肩に手を伸ばした。
起き抜けにこんな大胆なことをしてくれた彼に、相応のお返しをしてあげないといけない。
(これくらいは許してもらわないと割にあいませんからね)
不思議そうに首を傾げるアヴィンの肩を、思い切り抱き寄せる。
「うわっ」
バランスを崩して倒れ込んでくるその身体。
あわてて両腕をベッドについた身体を抱きしめ、そっと囁く。
「もうちょっとだけ、このままでいてくれませんか?」
「でも、飯が……」
「冷めてしまう前には起きますから。それまで、もう少しだけです」
もう一度きつく抱きしめると、耳元で聞こえたのは、小さな笑い声。
それと、わかったよ、という甘く優しい声だった。

爽やかな朝のひとときvv


とーっても素敵はお話を頂きましたv
もう、最初の一行でくらくらっと・・・(笑)。二人っきりの秘密の時間、という感じがグーですv
アヴィンの甘えっぷりも、ミッシェルさんのお返しも、最高です~。
カットに描かせてもらったのは、読後の第一印象です。
本当はもっと後の方のカットを描きたかったのだけど、力量不足であきらめました~。
来夏さん、ありがとうございました!!

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