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Fanfiction 二次創作 封印の地|時の踊

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時の踊

そのまま・・・うとうととしてしまったらしい。
声を掛けられて目覚めたとき、部屋にはランプの明かりが灯っていた。
「アヴィン、起きて。食事にしよう。」
優しく肩を揺り動かしているのはミッシェルだった。
見慣れない白い服を着ている。いや、服と言うよりはガウンのような・・・
そこまで連想して、記憶がつながった。アヴィンは身体を起こした。ひやりとする空気に身体を震わせる。何も身に付けていなかった。
「これを羽織りなさい。食事を運ばせたから、一緒に食べよう。」
素肌に、ミッシェルの物と同じ柔らかな服が掛けられた。
「もう、夜なのか?」
「とっくにね。」

隣の部屋に食事が運ばれていた。
二人は隣り合って座り、料理を口に運んだ。会話がなくても、側にいるだけで安心感があった。
時々視線を交わしながら、あらかたの皿が空になるまで、言葉は必要にならなかった。
実際、アヴィンだけでなくミッシェルも空腹であったのだ。

食欲が満たされると、ミッシェルは新しいグラスに酒を注いで一つをアヴィンに手渡した。
「少し、まじめな話もしておこうか。」
「トーマスの方の話?」
「聞きたくない?」
アヴィンはかぶりを振った。
「・・・いいよ、教えて。」
「アリアさんを訪ねて、彼女の一族について伺ってきました。彼女らはガガーブ全域を支配していた青の民族の末裔なのだそうです。」
「えっ。」
さすがにアヴィンも驚きを隠せなかった。アヴィンの古里でも青の民族と赤の民族の戦いは伝えられている。ガガーブの世界が元は一つだと、こんな事が教えてくれるのだ。
「彼らの伝承によれば、この世界には負の塊が封印されているそうです。それは、かつてある事をするために使われた力で、甦らせてはならない物なのだと・・・。」
「ある事って?」
ミッシェルは首を振った。
「まだ教えてもらえません。」
ミッシェルは落胆していなかった。きっと打ち明けてもらえるまで通いつめるつもりなのだろう。
「ただ、それがあるのはセルバートの遺跡なんだそうです。」
「それはトーマスが向かった村じゃないか。」
「ええ。そして、ヌメロス帝国が別の軍隊を派遣している先でもあります。」
「・・・・・・・・・・」
沈黙が落ちた。アヴィンはグラスを持ったまま眉を寄せていた。
ミッシェルが、グラスの中身を一気に飲み干した。
「ヌメロス帝国はアリアさんを狙っていた。今度はセルバートの遺跡を確実に狙っています。あの国は、青の民族の過去を熟知している。いや・・・少なくとも、支配者に囁きかけることの出来る者がいるのでしょう。」
「・・・俺たちがこの街にかかわっていなければ、それを探りに行けたんだ・・・。」
アヴィンがすまなさそうに言った。
「いいんだよ。今となっては危険すぎる気もするしね。」
ミッシェルは頬に赤味の差した顔でアヴィンに笑いかけた。
「プラネトスII世号はトーマスの要請に応じられるように、エネドの近海へ向かわせました。今はアヴィンたちを移動させる手段もない。ここで心置きなくカヴァロの人たちを応援してやりなさい。」
「ありがとう、ミッシェル。」
「その代わり、いっぱいお詫びをしてもらうからね。」
不意にミッシェルの手が伸びて、アヴィンのあごを捕まえた。
「朝までここにいるでしょう?」
「・・・伝言か何かした方がいいのかな・・・戻らない事。」
「心配してくれるならさせておけばいいでしょう。マイル君も子供ではないのだし。」
急に不機嫌になった様子が、やきもちを焼いているように聞こえて、アヴィンはちょっと嬉しかった。
「わかったよ、ミッシェル。」
アヴィンはミッシェルの手を両手で包み込んだ。ゆっくりと頬ずりする。
「俺・・・なんでもする・・・」
ミッシェルが満足そうにアヴィンを見つめた。

記:2001.1.5


ほんの軽い話だけ載せようという自分への制約は、早くも崩れ去ってしまいました。
いきなり怪しい状況全開です・・・
「白昼夢」とこの「時の踊」は間が抜けているけれど同じ日のお話です。
そして、多分、この時以外、二人に濃密な時間は訪れなかっただろうと仮定しながら書いてみました。
あ、いや、この世界でではね。昔の事は置いといて。
表にある「酒場」という小説で、アヴィンが頑なにミッシェルを避けていた、裏返しかもしれません。

「時の踊」というのは、クラシックの音楽にそういうタイトルのものがあるんですが、
NHKの「音楽ファンタジー夢」という番組でCG付きで流していたんですよ。
そのイメージが好きで、最後に二つのボールが仲むつまじくじゃれあっている様子が
似ているかなと思って付けました。

二人の関係の根底には、旧版の朱紅い雫があります。
大体表にお話を書く以前に、こういう裏設定をして遊んでいるので、
文章にはなっていなくても、プロット程度の事はあるわけで・・・。
自分の描くアヴィンがミッシェルに逆らえないのは、
茫然自失としていた時に救われたという想いがあるからなんです。
これはもう、ずっと引きずっていくと思います。
WIN版の、ミッシェルさんを胡散臭そうに見るアヴィンは、私にとっては別の人も同じです。

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