Fanfiction 二次創作 封印の地|アヴィン腰痛物語
アヴィン腰痛物語
このお話は、「カヴァロ解放6-1」の朝帰りアヴィンの続きと思ってお読みください。
(間違っても「白昼夢」&「刻の踊」の続きだと思わないように・・。
痛みを残すようなドジ、するわけないですよね~。)
「いててっ。」
椅子から立ち上がろうとして、アヴィンが腰に手を当てて痛みをこらえた。
「アヴィン、どうしたの?!」
マイルがびっくりして叫んだ。
「だ、大丈夫。」
アヴィンが苦しそうに言う。ちっとも大丈夫には見えない。
「沼地へ行ったときに、魔獣にぶつけられたんだ。」
「ええっ!」
マイルは慌ててアヴィンを支え、彼の寝台に引っ張っていった。
「何ともないって。」
寝台にうつぶせに寝かされて、アヴィンは抵抗する。
「ちゃんと手当てしたの?」
マイルは疑わしそうな目を向ける。
「いや・・・昨日はこんなに痛まなかったんだよ。」
アヴィンは額に脂汗をかきながら答えた。
マイルはアヴィンの背骨に沿って、軽く手のひらを押し当てていった。
「ウッ!」
腰の、ちょうどウエストのあたりで、アヴィンが声を出した。
心なしか、服を通しても熱っぽさが伝わってくる気がした。
マイルは、熱を感じるあたりを少し強めに指先で押さえてみた。
「痛いっ!何するんだ、マイル。」
アヴィンが首をひねってマイルを睨む。本当に痛かったらしく、目尻がきらっと光っていた。
「ごめんよ、アヴィン。でも、ここは炎症を起こしているみたいだ。骨に異常はないと思うけど、ちゃんと確かめておいた方がいい。」
「うん・・・。」
アヴィンもしぶしぶ同意する。
「じゃ、服を脱いでみて。」
マイルが言った。白魔法使いの言うことである。アヴィンは腰をかばいながら寝台に座り、上半身裸になった。
「背中を向いてよ。」
言われるまま、アヴィンはマイルに背中を向けた。
「ああ、やっぱりひどく腫れてるよ。アヴィン、毒のある魔獣じゃなかったよね?」
そう言いながら、赤く腫れ上がった部分をそっと指でなでる。
「違うと思う・・・ミッシェルさんも何も言わなかったし。」
「そう。・・どうしてミッシェルさんに治してもらわなかったのさ、アヴィン。」
マイルは腫れの広がりが想像以上なのに気付き、顔をしかめた。
「・・・かっこ悪いじゃないか。俺ばっかり沼に落ちたりして・・・。」
決まり悪そうに言うアヴィンに、思わず苦笑する。
そんな事で見栄を張って、怪我を悪化させるなんて。いかにもアヴィンらしいじゃないか。
「回復魔法と、消炎の塗り薬を両方した方がいいね。もう一回うつぶせに寝て。」
「ああ。」
「動くと骨に響かない?」
「ゆっくり動けば大丈夫。背中をやられていたら、とてもじゃないけど動けないだろ? 大丈夫だよ。」
アヴィンは口だけは達者にそう言った。
「ねえアヴィン?」
マイルが奥歯に物の挟まったような、あいまいな言い方をした。
「何だ?」
うつぶせに寝て、両手をあごの下で組んだ姿でアヴィンがマイルを見た。
「ちょっと腫れが広がってて・・・。悪いけど、ベルトを緩めてくれないかな? ちゃんと手のひらを当てた方が、効きが良いんだ。」
「ああ・・そうか。」
アヴィンはベルトを緩めようと体を動かしたが、その度に腰の痛みに顔を引きつらせた。
「あ、ごめんごめん。」
マイルは慌ててアヴィンの代わりにベルトに手を掛けた。バックルをはずし、引っ張って抜いてしまう。
「ちょっと失礼するよ。」
ちらっとアヴィンを見て断ってから、マイルはズボンに片手を差し込んだ。そのまま背に回し、腫れている部分をそっと覆う。
「マイル、もうちょっと手を浮かせられないか?」
アヴィンがしかめ面をして言った。
「痛むかい? でも余裕がないや・・・。前をゆるめちゃっていいかな?」
いいも何も、他に方法はない。アヴィンは頷いた。
マイルはジッパーをゆるめると、腫れた部分が全部見えるように服をずらした。マイルの片手にちょうど隠れるくらいの面積が、赤く腫れ上がっていた。
「じゃ、回復を掛けるよ。リラックスして、余分な力を抜いてごらん。」
マイルは寝台に横座りになって、片手をアヴィンの患部に当てた。もう片方の手は、自分が倒れ込まないように寝台に突いていた。
目を閉じ、意識を手のひらに集中させて、回復の呪文を唱える。
かすかに触れているだけだが、アヴィンの体からこわばった力みが抜けていくのがわかった。指先に、アヴィンの呼吸が感じられた。ゆっくりと深く、落ち着いた息づかいだった。マイルは自分の呼吸をアヴィンのそれに合わせた。吸って・・吐いて・・緩やかなリズムが重なり合い、魔法の効果が余すところなくアヴィンの体に流れ込んでいく。
肌に集まった熱が、少しづつ発散していった。
「どう? そろそろ痛みが引いてきたんじゃない?」
しばらくしてマイルが聞いた。すぐには返事がなかった。アヴィンは気持ち良さそうに目を細めていた。
「うん・・・。」
やっと生返事が返ってきた。
無意識に答えているような、妙になまめかしい返事だった。マイルはどきりとした。
アヴィンはゆっくり肩を起こした。腕を突っ張って、背中に向けて反り返る。
「ううーん。」
今度はひざを体に付ける様に折り曲げてみる。腰が痛んでいたら、到底出来なさそうな格好である。
「大丈夫そうだね。」
寝台の上で、今度は猫が体を伸ばしたような格好になったアヴィンに、マイルは言った。
「うん。痛みは消えたよ。さすがだな。ありがとう、マイル。」
アヴィンが顔をほころばせた。
「どういたしまして。」
マイルはそのまま立ち上がろうとするアヴィンを押しとどめた。
「ちょっと待って、薬を塗っておこう。」
「いいよ。十分直ったから・・。」
さっきまでのしおらしさはどこへやら、アヴィンはごねた。
「念のためだよ。一日放って置いたんだから、用心してよ。」
「ちぇっ、心配性なんだから。」
アヴィンは愚痴を言いながらも横になった。マイルは薬を取り出して自分の手のひらに広げ、マッサージの要領で患部にすり込んでいった。
まだ赤味は残っていたが、もう熱っぽさはなかった。薬の粘つきがなくなるまでマッサージをしてから、マイルはようやく納得がいった顔になった。
「もういいよ、アヴィン。」
手の掛かる友人に少々の反発も込めて、マイルは無防備なアヴィンの腰を叩いた。
「痛てぇ!」
アヴィンは飛び上がり、マイルを睨みつけた。
マイルは笑いがこぼれて仕方なかった。眉を吊り上げて睨まれても、脱げ掛かったズボンをまとわりつかせている姿では全く迫力がなかった。
アヴィンは顔を赤らめてズボンをはき直した。
「一応ありがとうって言っとくな。」
アヴィンがむっとした口調で言った。
「つれないなぁ。それだけ?」
マイルがまだ笑いの収まらない顔で言った。
アヴィンは口を尖らせたが、仕方なさそうに答えた。
「痛みが消えて助かった。・・・マッサージも気持ち良かったよ。」
「うん。そう言ってくれなくちゃ。」
マイルはにこやかに言い、それから意味ありげな顔で付け足した。
「言ってくれたらいつでもマッサージしてあげるよ。」
「え?・・・ああ、そうだな。また頼むな。」
アヴィンが明るく答える。
『やっぱりアヴィンだなぁ。』
無意識にアヴィンをさすっていた手のひらを自分の胸に押し当てる。
マイルは、えも言われぬ喜びに包まれた。
ええと、何故ここに「マイル×アヴィン」のお話があるかといいますと・・・日頃多大な影響を受けているサイトさんのごひいきだからです。それとやっぱり、WIN版の二人は仲良くておもしろいですし。
「×」って言っても、そんなに直接的にあんな事やこんな事は・・・書けませんので、ボケ通しました。
それと、このお話の爆笑なタイトルはSさんに付けていただきました。(隠しだから伏せておきました。)ぴったりなタイトルをどうもありがとう!