Fanfiction 二次創作 封印の地|証拠隠滅
証拠隠滅
「いてててっ。」
身体を起こそうとして、アヴィンは盛大に悲鳴をあげた。
アヴィンは顔を赤く染めて隣にいる人を見た。
どうしよう・・・と、その顔が言っていた。
何とかして欲しい・・・と、その瞳が訴えていた。
「傷めてしまった?」
視線に気付いたミッシェルは、眉を寄せてアヴィンを見た。
アヴィンはばつが悪そうに頷いた。
・・・確かに、無理強いをさせてしまった自覚はある。
「わかった。うつぶせになってごらん。」
ミッシェルはアヴィンの身体を確かめて、自分に嘆息した。
『いつになったら、自制できるようになるのだろう。』
決して傷つけたい訳ではないのに。
それどころか、大切に愛でていたいのに・・・。
自戒を込めて、痛む場所に口付ける。
回復を促す力を、送り込んでいく。
「う・・・」
時折、痛みなのか、違うものなのか、アヴィンが声を漏らした。
ミッシェルは無心に・・・猫が終わることなく身づくろいをしているように、
傷口を舐め続けた。
「ミッシェル・・さん・・・。」
あえぐような息の下から、アヴィンが呼んだ。
ミッシェルはふと我に返って顔を上げた。
「なんだい?」
アヴィンが背中越しにミッシェルを見つめていた。
「もう・・・いい。治った・・」
それだけ言うのが精一杯という様子で、アヴィンは再び突っ伏した。
どうやら痛みではなく、別の感覚に身体を支配されているらしい。
『やれやれ、これではいつまでも・・・。』
終わりは来ない。
ミッシェルは了解したと言う代わりにアヴィンの身体をひっくり返し、
いたずらっぽい笑みを浮かべてもう一度口付けた。
おわり
リニューアル記念の放出品第二弾です。
これは昨年、一部の方々にメールでお分けしたお話です。
なんか自分の書くものは、あやしい物ほど短くなる傾向があるみたいです。
開き直って事細かに描写すると長くなりますが、一場面だけのお話などは、
書き込むとちょっと…かなあ、という部分をザクザク省いていくと
まさにぎゅっと詰め込んだ状態になります。
載せるに当たって読み返してみて、一体最後のキスはどこへ?・・・と
書き手のくせに困ってしまったのでした。