Fanfiction 二次創作 封印の地|バンダナ
バンダナ
ミッシェルの手がシーツの中に埋もれたバンダナを拾い上げた。
「それは俺の。ミッシェルさんのはこっち。」
気だるそうに身体を休めているアヴィンが、もう一本のバンダナを差し出した。
「そうでしたか?」
ミッシェルはさらりと言ってバンダナを受け取った。
元は同じ赤いバンダナなのだが、ミッシェルのそれの方が年季が入っている。
ぱっと見て、見間違える事がないくらい色あせしているのだ。
どうしてそれを取り違えるのかと、アヴィンが不思議そうな顔をしていた。
ミッシェルはアヴィンの視線に気付くと、意味ありげに笑って見せた。
「何だ?」
「ええ、ちょっとね。」
ミッシェルは二本のバンダナをたたんで左手に乗せた。
そして、右手をその上にかざすと、かすかな低い声で何かをつぶやき始めた。
アヴィンはじっとそれを見守った。
もう帰る時間が来ている。
どんな事であれ、ミッシェルをここに引き止めてくれるのはアヴィンにはありがたかった。
ミッシェルは何かの術を吹き込んでいるようだ。
黒魔法以外を殆んど知らないアヴィンには、それがどんな魔法なのかはわからなかった。
だが、ミッシェルの手の中には自分のバンダナも収まっている。
二人に必要な・・・攻撃力アップとか、素早さを上げてくれるとか、そういった類の魔法だろうと思われた。
やがて詠唱を終えると、ミッシェルは片方のバンダナをアヴィンの額に当ててみた。
「また違ってる。これはミッシェルさんのだったら。」
アヴィンはあてがわれたバンダナを見て言った。
「いいえ。」
ミッシェルはアヴィンの言葉をしりぞけた。
「これはあなたのものですよ、アヴィン。」
そう言って、アヴィンの頭に巻いてやる。
アヴィンはやっと意図を理解し、ミッシェルがやりやすいように頭を持ち上げた。
「攻撃力を高めるように力を封じておきました。私と思って身に付けてくれると嬉しい。」
トレードマークの結び目を結いながら、少し照れた顔をしてミッシェルは言った。
「ああ。大事にするよ。」
アヴィンも照れくさそうに答えた。
「私も、なかなかこちらに来られませんからね。これはあなたの代わりに連れて行きますよ。」
手の中に残ったもう一本のバンダナを見つめてミッシェルは言った。
「俺が巻いてやるよ。」
アヴィンは起き上がった。
空気にさらされて素肌が冷やりとしたが、それには構わずミッシェルの手の中からバンダナを取り上げた。
ミッシェルは背をかがめてアヴィンにゆだねた。
バンダナを後ろで縛り、端の部分を巻いた中に押し込むと、いつものミッシェルの姿になった。
「よし。」
アヴィンはにっこりと笑った。
「では、そろそろ行きますね。」
名残惜しそうにミッシェルは言った。
「うん・・・。」
アヴィンはミッシェルの額のバンダナをそっと指でなぞった。
先程まで自分の額にあったそれは、いかにもアヴィンの分身としてふさわしかった。
ミッシェルがバンダナ同士をくっつけるように顔を寄せてきた。
思わず目を伏せたアヴィンに、ふわりと暖かな口付けが贈られた。
20020310
久しぶりの裏更新です~。
ホワイトデー、ホワイトデーと想像を巡らせていたのですが、即席で書けたのはやっぱり裏のものでした(笑)。でも、14日を10日と勘違いしていたので、これから表向けも頑張りますv。
ミッシェルさんからアヴィンへのプレゼント。
お楽しみの時間が一番のプレゼントな気もしますが、それはお互い様なので、魔法力を封じたバンダナをプレゼント。あれ、でもこれも交換品だからお互い様かなぁ。
きっと魔法力とか何とかは言い訳に等しくて、アヴィンの身に付けた物が欲しかったんですよ。素直に言わない(言えない?)あたり、ミッシェルさんも可愛いものですv。