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Fanfiction 二次創作 封印の地|トーマスvsアヴィン(断片)

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トーマスvsアヴィン(断片)

自分の二次創作の原点に当たりそうなメモを発掘しました。
同じ場面を書こうとしているのですが、3つのメモそれぞれに異なる展開に発展しそうです。
結局これらは没になり、もっとずっとマイルドな展開の「酒場」の話にまとまりました。

どちらも2000年で、檻歌直後。雫の再プレイより前に、ミッシェル×アヴィンを考えていたのかなぁ。
トーマスも、今考えるよりずっとワイルドな人に描いています。

いろいろ、補足などは一番下へ書きます。

 

メモ1

「そんなにカッカしたってしょうがないだろ。」
夕食のあと、ずっと落ち着きのないアヴィンに、マイルが声を掛けた。
「別に、怒ってるわけじゃない。」
アヴィンは不機嫌そうに答えた。プラネトスⅡ世号の客室。荷物はすっかりまとめられ、上陸が程近いことをうかがわせていた。アヴィンは寝台に上がって膝を抱えていた。
原因ははっきりしている。明日が接岸の日だというのに、長旅を共にしてきたミッシェルが、キャプテン・トーマスのキャビンに入ったきり出て来ないのだ。
  アヴィンたちとミッシェルは、故郷を異にする仲間だ。明日上陸したら、それぞれがなすべき事をしなければならない。しばらくはミッシェルもこちらの世界にいるはずだが、膝を交えてゆっくり話をするひまなど、おそらくもう取れないことだろう。だから、今日はじっくり話をしたかったのである。
『話が出来ないだけでこんなにいらつく程、俺は子供じゃないはずなのに。』
一向に納まらない自分を持て余しつつ、アヴィンはミッシェルが出てくるのを待っていた。

「何を話しているんだろうね。」
マイルが聞いた。マイルはアヴィンの様子が気になって、彼の部屋へ来ていたのだ。
「俺が知るはずないだろ。」
「上陸した後ですることは、昼間十分話し合ったじゃないか。わざわざ二人きりで話すことなんかあったかなあ。」
「しばらく別行動になるからだろ。」
アヴィンはそっけなく言った。言葉に出してから、きっとその通りだろうと思った。今回のヴェルトルーナ行きで再会した時から、ずっとそうだったのだ。
ミッシェルは得意の移動術であちらこちらを飛び回っていた。そして、行く前も、帰った時も、二人は長い時間話し込んでいたのだった。はじめのうちは事情のわからなかったアヴィンも、だんだんと二人の相談の内容が気にかかり始めていた。だが、トーマスに尋ねても「たいしたことは話しちゃいないよ。」と言われるばかりだった。ミッシェルも、穏やかに微笑み返すだけで、何も語ってくれようとはしなかったのだ。
「せっかく大仕事が終わったというのにな。」
故郷を目前にしたアヴィンの、それは偽らざる思いだった。

「私は、こんな事を始めてしまって本当に良かったのでしょうかね。」
キャプテン・トーマスのキャビン。ミッシェル…ミッシェル・ド・ラップ・ヘブンは、いつものポーカーフェイスよりちょっと深刻そうな顔でつぶやいた。
「やるだけやる。出来ることをやらずにあとで後悔するよりな。ラップ、お前みんなの前ではそう言ったじゃないか。」
トーマスは天井を見たまま言った。上着は脱いで、Tシャツ姿でベッドに寝転んでいたのだ。頭の後ろで両手を組み、船のゆれに身を任せてくつろいでいた。その脇の椅子にミッシェルがいた。
「確かにそう言いました。でも、私がはじめることのせいで、あなたもアヴィンもきっと一生振り回されるでしょう。それでもよかったんですか?」
「なんだ、気弱になってるじゃないか。どうしたんだよ。」
トーマスが顔を上げてミッシェルを見た。

(メモ1の日付 2000/5/30)

 

メモ2

「よぉ、アヴィン。ミッシェルの顔を見ないと眠れないんだって?」
「トーマス!」
「わりぃな。あいつはもう眠っちまったよ。」
わざと挑発するようにトーマスはニヤッと笑った。
「俺のベッドでな。」
アヴィンの表情がサッと変わるのを、トーマスは面白そうに見ていた。
「あんたたち・・・」
続く言葉が出てこない。アヴィンは顔を朱に染めた。
トーマスはアヴィンの寝台に腰を下ろした。体をひねると寝台の上で膝を抱えていたアヴィンと目が合った。
「俺たち? 俺たちは一心同体さ。
  あいつは鳥だ。すぐにどこへでも飛んで行ってしまう。
  誰も止められない自由な鳥だ。
  だけどあいつも時には巣が恋しくなるのさ。
  暖かいところを求めて、この船へ、俺の胸へ帰ってくるのさ。
  ガガーブを越えたあの時から、ずっとそうなんだ。
  ミッシェルは俺のモノだ。」
「そんな・・・。ミッシェルさんに限って・・!」
アヴィンは信じられない様子でうめいた。
「信じなくてもいーぜ。本当の事だけどよ。
  それでアヴィン、お前の方こそあいつに気があるんだろ?
  俺の話を聞いてそんなに血相変えちまって。」
「そんな事ない。」
「じゃあ何でイライラしてるんだ? マイルがこぼしてたぜ。
  今日のお前はピリピリしてるってな。俺がミッシェルを取ったのが
  許せないからじゃないのか?」
「・・・」
「アヴィン、本当は帰りたくないんじゃないか?」
トーマスの言葉にアヴィンはハッとした。

 

メモ3

ハァハァと荒い息づかいの下で、アヴィンは泣いていた。
のどの奥から絞り出した声で彼は言った。
「俺・・帰るよ。帰る・・エル・フィルディンへ。」
アヴィンをいじめていたトーマスは、顔を上げ、彼を見つめた。
アヴィンはまっすぐトーマスを見上げた。
「あんたに・・任せる。ミッシェルさんを・・・頼む。」
そう言うと、彼の目から新たな涙がこぼれた。アヴィンは歯を食いしばり、トーマスから目を離すまいとしていた。
それを見て、トーマスは満足そうに笑った。
「任せな。俺の全てをかけて、ラップを守ってやる。」
『約束だぜ』心の中でつぶやきながら、トーマスはアヴィンに口づけた。
唇が怒りに震えているのが判ったが、アヴィンは顔をそむけたりはしなかった。
・・・じゃあ、いただいちゃえ。
抵抗をやめたアヴィンは、トーマスを自由に振舞わせてくれた。
自分が折れた相手がどんな男か、確かめずに居れなかったのかも知れない。
トーマスはアヴィンの身体を楽しみつくした。ロクに体験もないらしいアヴィンはトーマスにとって新鮮な獲物だった。

「俺は明日の昼にはバロアへ発つからな。ヴァルクド行きで心残りのないようにラップと話しておけよ。次があるかどうかなんて判らんからな。」
去り際にトーマスが言った。アヴィンはぐったり疲労した身体をのろのろと持ち上げ、うなずいた。
「使いモノにならねェかもしれないな。ブリザックにはルカの姉さんがいるってのに、悪かったな。」
捨てゼリフを残して、トーマスは船室から出て行った。
アヴィンは夢の中へ引き込まれそうになりながらも、トーマスの言葉に引っかかっていた。
『誰がいるって? ルカ・・・・?』
ぐぐっと眠りの世界に引きずり込まれるところだった。アヴィンはハッとして上半身を起こした。
『ルティスがブリザックにいる!?』
6年前、レミュラスの山小屋に来ないかと誘ったものの、アヴィンとアイメルに遠慮したのか、ルティスはすぐに小屋を出てしまったのだ。その後、どこでどうしているのか、アヴィンは全く知らなかった。
胸がドキドキするのが判った。トーマスやミッシェルに相対したときの高鳴りとは全く異なるときめきだった。
ミッシェルやトーマスとは並んで生きたい。だが、ルティスとは向かい合って互いを見つめて生きていきたい。6年前、確かにアヴィンはそういう気持ちでルティスを招いたのだ。
『トーマス、知っていたんだ。』
ルカが言ったのだろうか。いや、そんな事はない。明朝入港だって?!
こんな事をしている場合じゃない。

(メモ2と3の日付 2000/1/24)

 

 

 

補足など

メモ3とメモ2は、同じ紙に書かれていたんですが、書いてあった順番は3が先で2が後でした。多分、3へ繋げようとしたのでしょうが、途中で挫折しています。
トーマスがアヴィンを襲っていますが、今書いたって、そんな展開に持ち込めません。

トーマスの主張としては、アヴィンには妹と恋人(妻?)と大親友がいるじゃないか。この上、愛人まで欲しいのか?
俺にはラップしかいない。故郷を離れてでもあいつの側にいる。お前が故郷へ帰るなら、ラップは俺に譲れ。
・・・と、そんなところだと思います。妥当な主張だと思います。
実際アヴィンは、旅で得たものが大きいですし、彼らを忘れる人ではないでしょう。

しかしまあ、トーマスにしても、アヴィンにしても、肝心のミッシェルの意向を確認しないまま、何をやっているのだと突っ込みを入れたいです。
私の書くミッシェルさんは、有りのままを受け入れてしまいかねないので、書かない方が緊張感があって良いかもしれませんが。ミッシェルさんにとっては、アヴィンは自分を頼ってくれた存在であるし、トーマスは似た夢を持つ、分かり合える相手だと思うのですね。

ただ、今これを読むと、私はひたすらアヴィンをエル・フィルディンへ、見晴らし小屋へ帰したかったのかもしれないと思います。そのきっかけとして、慕っていたミッシェルに他に恋人がいたという設定を作ったのかもしれないと感じるのです。
檻歌をプレイしていて、アヴィンとマイルの活躍ぶりに残念な思いをしていました。主人公を食うような、大きな扱いだったからです。おまけに一年後の演奏会にもいました。マイルは知りませんが、アヴィンはアイメルとルティスが故郷にいるはずです。放っておいて欲しくなかったのです。

これをアップすることで、一つの区切りが付くような気もします。別れていく道も人生です。
さて、魔道師様はいつまで船に乗っていてくれるんでしょうか。そこにもまた、別の葛藤があるかな?

(補足の日付 2009/8/29)

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