墓参り
(From 英雄伝説III~V)by 神無月裕也さま
「Zzz…」
あったかい布団に、ふんわりして暖かい日差し、そして…
がつん!!
「いててっ」
突然、頭に痛みと一緒に衝撃がやってきて、ボクは目が覚めた。
目を覚ましていると、そこには…
「もうっ、お寝坊なのは変わらないんだから」
…ボクの幼なじみのクリスがいた。角と牙を生やして。
「ふわぁ~。おはよう、クリス。こんな朝早く、どうしたの?」
「朝早く、じゃないわよ。もう11時よ。それに、今日は何の日か忘れたの?」
ダークナイトのような顔をしたクリスに聞かれ、ボクは考え込んだ。
えーと、なんの日だったっけ…
うーん…
うーん……
あっ!
「あ、そうだ!ゲルドさんの命日だ!」
「やっと思い出したようね。ほら、いくわよ」
クリスに耳を引っ張られて、ボクは家を出た。
「わかったから、そんなに耳を引っ張らないで」と言おう…と想ったけど、
クリスのかみなりが怖いからやめた。
「ふわぁ~、おはようございます…」
「おはようございますっ」
ボクとクリスがラップじいさんの家に入ると、そこにはラップじいさんとデュルゼルさん、
そしてルーレじいさんともう一人、見知らぬおじいさんがいたんだ。
「おぉ、やっときたようじゃの」
「久しぶりだな、ジュリオ、クリス」
「まぁ、寝る子は育つじゃ。ほっほっほっ」
「よぉ」
知らない人がいるということで、ボクたちはおそるおそる家の中に入って聞いて見た。
「あ、あの…こちらの方は?」
すると、ラップじいさんはわはははと、ルーレじいさんは「ほっほっほっ」と笑いながら紹介してくれた。
「あぁ、彼はアヴィン。わしがまだ若かったころ、一緒に色々冒険した友達じゃよ」
「そういうことだ。よろしくな」
「ラップじいさんが若かったころって…。オルドスを開く前の話?」
「あぁ、もうそんな昔になるのか…。そうじゃよ。わしがガガーブを越えたり、大蛇の背骨を越えたりしていたころの話じゃ」
そうなんだ。ラップじいさんは、実は若い頃は色々なところを冒険して、大事件を解決してきて、ティラスイールに戻ってきてからは、オルドスを開いたすごい人なんだ。
ボクたちも、巡礼の旅を終えてから教えてもらったんだけど…。
でも、いつも変わり者のラップじいさんがそんなすごい人だったなんて…。
教えてもらった今でも信じられないなぁ。
「そういえば、その頃のラップじいさんってどんな人だったんですか?」
クリスの質問に、アヴィンさんが顔をほころばせながら答えた。
「あぁ。とても真面目だけどユーモアがあって、頭脳明晰な人だったよ。
俺やトーマス…おっと、ルーレも、だいぶん助けてもらったもんだ」
「ほっほっほっ。本当のことを言われると照れるわい」
そのラップじいさんを見て、苦笑するルーレじいさん。
「本当、変わったもんじゃのう。あの、頼りになっていたころとは全然違うわい」
「何をいっとる、ルーレ。おぬしもずいぶん変わってるじゃろうが」
「まぁ、そうじゃな。変わってないのは、アヴィンだけか」
「ちぇっ、なんだよそれは…」
そこまで言って、4人とも大きく笑った。
「さて、そろそろ行ったほうがいいと思うのですが、どうですかな?」
デュルゼルさんの言葉に、4人とも笑いを止めた。
「おっとそうじゃったな。それでは行くとしようかの」
「そうだな、あんまり待たせたら、ゲルドに悪いしな」
そしてボクたちは、軽く支度したあと、ゲルドさんのお墓参りに、ゲルドの丘に向かった。
その途中…
「くにゅくにゅっ」
現れたのはかたつむりの魔獣、デスカルゴ2体。
巡礼の旅で戦いには慣れてるとはいえ、やっぱり緊張して戦いの態勢をとるボクたち。
一方、ラップじいさんたちはたいした緊張もせずにそれぞれの武器を構えた。
「さて、やるとするかのぅ」
「まぁ、軽くあいさつじゃ」
「よし、いくぜ!」
そして魔獣たちに襲い掛かると、あっという間に、蹴散らしてしまった。
本当にかっこいいや!
「なんか、本当にすごいわね、あの三人」
感心して言うクリスに、デュルゼルさんが語りかける。
「ラップ殿から聞いたところによると、アヴィン殿は若かったころ、破壊の神と戦って討ち破ったそうだ。
ラップ殿やルーレ殿も、かなりの凄腕だったと聞く。
もしかすると、俺なんか足元に及ばぬかもしれないな」
感心しながら言うデュルゼルさんに、ボクはあわてて言う。
「そ、そんなことないよ。デュルゼルさんだってすごいと想うよっ」
「そうね。私たちと一緒に世界を救ったんだもの」
ボクたちがそう言うと、デュルゼルさんは苦笑しながら答えた。
「ふふ…ありがとうよ。老兵にはうれしい言葉だ」
そして、ボクらはゲルドの丘にたどりついた。
ゲルドさんのお墓の前にお花を添えて、お参りをした。
もちろん、この世界の平和がずっと続くことを願いながら…
ちなみにその後、お弁当の分け前を巡って、ボクとクリスがけんかになってボクが負けたのは言うまでもないけどね。
END.
~神無月さまのあとがき~
今回のお題は、ゲルドの墓参り…という以前に、かつての冒険者仲間集合!ってところでしょうか。
やっぱりアヴィンは、おじいさんになってもあのままでいてほしいなと想う今日このごろ。
でも、トーマスはおじいさんになっちゃってるのに、どうやってアヴィンはこちらまで来たんでしょうか?(笑
プラネトスⅡ世はトーマスのもう一人の息子(レッド以外の)が引き継いでるのかな?
それにしても、デュルゼルさんの影が薄いような…(汗
神無月裕也さんから再びSSをいただきました。
それももう、管理人のツボを揺さぶってくれる美味しいお話でした!
アヴィンが気持ちが若いままな感じでとても嬉しかったです。
全てが終わったあとのお話…実は私もとっても近いお話のネタを温めていて、
嬉しかったりショックだったり(苦笑)。いつかきっと自分のネタも書きますね。
神無月さん、ありがとうございました!
2003.6.26