「私はマール」クリスタイプ
みなさん、こんにちは。
私はマール。ウルト村出身の18歳。
母さんは、私が男っぽく育ったって文句を言っているけれど、これは仕方がないのよ。
だって、同じ年頃の女の子なんて、ウルト村には一人も居ないんだもの。
ちょっと年上に、村長さんのところのユズ姉がいるけれど、
彼女はどちらかと言うといたずらのお師匠さんだったもの。
私の親友はね・・・あ、ほら。うわさをすればやって来たわ。
「おーい、マール!」
「アヴィン!!」
私の親友はひとつ年下のアヴィン。
8年前、見晴らし小屋の賢者さまのところへ連れられてきたの。
彼はほかに身寄りがなくて、賢者さまに引き取られたのよ。
でも・・・。
この先は私しか知らないこと。
実はアヴィンには生き別れた妹がいるの。
名前はアイメル。
事情があって二人は別々に隠れて住んでいるのだって。
そしてそして、アヴィンはアイメルがどこに住んでいるのか知らないのよ!
この話を打ち明けてもらった時、私、アヴィンと一緒に泣いちゃった。
運命なのか宿命なのか知らないけれど、
たった二人だけの兄妹をばらばらにしてしまうなんて、許せないと思ったの。
私はアヴィンと約束したわ。
いつかきっと二人でアイメルを探しに行こうねって。
「マール、大変なんだ!」
息せき切って走ってきたアヴィンの様子が、なんだかいつもと違う。
「どうしたの? アヴィン。」
「じいさんが・・・、じいさんが死んじまった!」
「ええっ、賢者様が?!」
「食事をとるまでいつもと変わりなかったのに、・・・そのあとで、急に・・・。」
アヴィンはこみ上げてくるものを歯を食いしばってこらえていたわ。
「私、母さんに言ってくる。アヴィンは村長さんに伝えるのよ!」
「ああ・・」
私たちは別々に駆け出した。
・・・思えば、あれが私たちの旅の始まりだった。
隠れ住むという呪縛から解放されたアヴィンは、
死に際に賢者様が教えてくれた妹の手がかりを求めて、王都の北、プレアウッドを目指すことになったの。
母さんも父さんも、私の気持ちをわかってくれた。
私は、旅支度をしたアヴィンに、いっしょに付いていく事を伝えたわ。
アヴィンはとても驚いたけど、でも喜んでくれた。
村の人たちに見送られて、私たちは旅立ったの。アイメルを求めて。
この旅を成し遂げたら、一回り大きくなれるような気がする。
アヴィンを守ってあげられたら、私、彼の側にずっといられる存在になれるかも知れないって思う。
アヴィンは大切な人だから・・・。
私、きっと彼を守ってみせる。
(終わり)
一応終わりですが・・・誰か続き書きません?
アヴィンに対して積極的になれないマイル(ドリームですが・・・)っていうのが、身内でトレンドでして。
んじゃ、最大の垣根である「同性であること」を取っ払っちゃったら、素直に書けるのかな?と思ったわけなのです・・・。
名前は、WIN版のカラムス先生のお話からもらいました。
(実は、読んでいないので、あのお話の中のマールとは全く関係がありません。)
男女の旅はガガーブのほかの2作では定番ですが、14歳と17歳では、いささか事情が異なってきますね。
あまり気にしていてはさくさくと進みませんが。