ミッシェルさん捏造企画:デュルゼルの手紙
デュルゼルの手紙
(白き魔女 最終章より エンディング)
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俺がまだ宮廷剣士になる前のことだ。
剣士に憧れる俺は、
武者修行を気取って旅を続けていた。
そんなときだ。
帰った者のいない魔女の島からただ1人戻り
魔法の都オルドスを開いた大魔道師オルテガが
その地を離れて隠居したと耳にした。
以前からオルテガには興味があった。
もちろん魔法と剣では扱うものに違いはあるが、
オルテガの極めた数々の魔法の話は
剣士が修行を積むのと近いものがあるからな。
オルテガが大聖堂にいるあいだは
とても恐れ多くて会いになど行けなかったが
隠居したのなら話は別だ。俺は人づてにオルテガの
居場所を探り、山間の村へ行き着いた。
大魔道師オルテガはそこにいた。
血の気の多いだけだった当時の俺にも、
オルテガは優しく接してくれた。
俺はオルテガから様々なことを学んだ。
果たして、どこまで俺がそれを活かし切ることが
できたのか、今になっても怪しいものだが・・
オルテガを心の師と仰ぐ関係は、
俺がルード城の宮廷剣士になった後も続いた。
やがて歳月が経ち、イザベルがこの世界に現われ、
しばらくしてゲルドが現われた。
この経緯については以前に話したとおりだ。 - 倒された白き魔女の横には1本の杖が転がっていた。
俺にはその残された杖に、
ゲルドの世界を憂う思いのようなものが
込められているように思えてならなかった。 - 俺はゲルドを埋葬した後、
ゲルドの杖を持ち、オルテガの元を訪ねた。 - オルテガはその杖を見て驚愕した。
巧妙に力を封じてあったが、杖に込められた力は
予想を遥かに越えていたのだ。
杖にはゲルドの意思そのものが吹き込まれていた。 - 力を有する杖も両刃の剣と同じだ。
使うべきときに使うべき者が使用しなければ
力は呪いと呼ばれることになる。
俺はオルテガにゲルドの杖を託すことにした。 - オルテガは持てる魔法のすべてを駆使し、
ゲルドの杖を封印して形を変え、
力が容易には発動しないように手を加えたのだ。
その杖を、クリスが持つことになったと言う訳だ。 - ゲルドの想念が残るゲルドの丘で
銀の短剣と並べたときに杖が発動するよう
してくれたのはオルテガだ。
その為にオルテガは魔法の力を殆ど失った。 - これでクリスの杖が、
なぜ、あのような力を発揮したのか
わかってもらえたことだと思う。
この話だけは、どうしても伝えておきたかった。 - (後略)