アリア
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そのときは、突然来た。
全身が逆立つような悪寒を覚えて、アリアは小屋の床にうずくまった。
「これは・・・何?! もしや、遺跡が掘り起こされて・・・。」
孫娘の異変に気付いたオラトリオ族長は、アリアに駆け寄った。
「まさか、ヌメロス帝国が。」
アリアはがたがたと震えた。
「エネドの港に軍艦が入ったとは聞いたが・・。」
「どうして?まるで、どこに何があるのか知っているみたい。」
「アリア、どうする。」
アリアはオラトリオ族長を見た。
「私、行きます。」
「お前が着く前に、あれは目覚めてしまうぞ。」
「間に合わなくても、押さえて見せます。」
「目覚めてしまったが最後、お前一人の力では押さえきれぬ。」
「でも・・・。」
「オースタンへ行きます!」
小屋の入り口から人影が飛び込んできた。
「貴殿は・・・。」
「ミッシェル!」
オラトリオとアリアは同時に叫んだ。
それは、息を弾ませたミッシェルだった。
ミッシェルはアリアに駆け寄ると、有無を言わせず彼女を抱きかかえた。
「まだ、間に合うんですね?」
確認するように問う。
彼の息づかいさえ聞き取れる。一体どこから飛んできてくれたのだろう。
「闇の太陽が目覚める前なら。」
アリアは答えた。ミッシェルはホッと息をついた。
「転移します。私に掴まっていてください。」
「なぜ、来てくれたの?」
アリアが聞いた。ミッシェルが答えた。
「私たちの未来のために。」
ミッシェルの瞳に吸い込まれそうだった。
無垢なきらめきを見せるこの瞳になら吸い込まれても良いと思えた。
アリアの心の中で、ミッシェルへの不信感は解けていった。
「・・・あなたを信じます。ミッシェル。」
アリアはミッシェルに告げた。
ミッシェルの表情に驚きと安堵が走った。
「アリア・・・ありがとう。」
「急ぎなさい。」
二人にオラトリオが言った。
「お頼み申す、ミッシェル殿。」
ミッシェルは頷き、アリアをしっかと抱き直した。
「行きますよ。」
「はい。」
詠唱の間も惜しむかのように、二人の姿は空に消えた。
オラトリオは小屋を出た。
禍々しい気配を察したのか、里の人々も家の外に出てきていた。
「心配するでない。アリアはすでに赴いた。」
オラトリオは人々に告げた。
ガガーブから一陣の風が里を吹き抜けていった。
『新しい風を受け入れるときが来たようじゃ。』
オラトリオはオースタンの方角を見た。
全身に感じる禍々しさが、 ふっと和らいだように感じられた。
<終わり>010214
せっかくのバレンタインデー、というわけで、野望のあった「ミッシェルとアリア」です。
男女の仲というのとは違うんですが(アリア、パルマンと出会った後だし。)
視野の広い者同士、なかなかいい線いっているのではないでしょうか。
好きな人に見つめられたい!という野望もありまして(笑)。
ミッシェルさんのまなざしを感じていただけたら本望です。
でもこのあと、ミッシェルさんは魔法が使えなくなったはず。(新IV参照)
だから倒れたアリアさんを救うのはフロードのお仕事だったのに~。 だめでしたわね。
でっち上げたにしては、うまく本編と噛み合いました。めでたしめでたし。