カヴァロ解放
day5-3
しばらくして、エノラがメリトス女史を引っ張ってきた。
「ウェンディ、大丈夫?」
「大丈夫ですわ。もう何ともありません。」
ウェンディは落ち着き払って答えた。
『さっきは血の気が引いていたのに。それに今だって、ぎゅっと手を握り締めてる。』
マイルは心の中で感心した。
こんな状態でも、ウェンディは自分の弱い面を見せたくないのだ。
何ていう強さだろう。
「そう? 無理をしちゃダメよ。お役目は終わったのだから、ゼル様にご挨拶だけして引きとっても良いのよ?」
「もう少し、ここに居たいですわ。にぎやかですもの。」
ウェンディは隣のテオドラの手を握った。
テオドラの気遣うような瞳に、ウェンディが実は怯えていることを知る。
「僕が側にいますよ。それにエノラさんだって。」
マイルはメリトスに言った。
「そうですよ。あんな兵隊の一人や二人、僕とマイルさんでギタギタのパーにしちゃいますよ。」
エノラがまるで拳法家のように腕を振り回したので、笑いが一同を包んだ。
ウェンディも口元を押さえて笑った。
「ボディガードが二人もいるなら安心かしらね。」
メリトスがほっとしたようにつぶやいた。
「『星屑のカンタータ』、素晴らしかったですね。僕は音楽をたしなむ事はありませんでしたが、良いものは聴けばわかるものなんですね。」
マイルはメリトス女史に言った。
「ええ、そうよ。どんな人の心にも響く、素晴らしい宝石たちですもの。」
メリトスがにっこりと笑顔を向けた。
ウェンディもテオドラも、嬉しそうな顔をして聞いていた。
「カヴァロに逗留した記念になりますわよ、マイルさん。」
ウェンディが言った。
「そうだね。いいお土産話になりそうだよ。」
「アヴィンさんもいらっしゃれば良かったのに。」
ウェンディが言った。
「そうだ、マイルさんは? マイルさんも、もう結婚しているのですか?」
テオドラが小首をかしげて聞いた。
「えっ? いや、僕はまだ・・・。」
マイルはいきなり話題を振られて、両手を胸の前でぶんぶんと振った。
「お袋にはいいかげん何とかしろって言われてるんだけどね・・はは。」
つい本音がこぼれてしまう。多分、このくらいは本当のことを話しても大丈夫だろう。
国が違っても、世界が違っても、母親と息子の関係なんて変わるものじゃない。
不意に、母親は今度の遠征も出したくなかったのだろうなと思った。
『ああ・・・帰らなきゃ。ちゃんと目的を果たして、アヴィンと一緒に帰らなくっちゃ。』
賑やかな大広間で、一瞬、マイルは独りぼっちになった。
想いを共にする仲間たちは、隣には居なかった。
「じゃ、今日は私たちのガードマンですよ?」
テオドラがマイルとエノラに向かって言った。
「え・・?」
話を聞いていなかったマイルは、聞き返した。
「お開きになるまで楽しまなくっちゃ。最後は送ってくださいね。」
「私からもお願いしますわ。さっきの様な事はもうごめんですもの。」
二人に頼まれて、断れるものではなかった。
マイルはチラッとエノラを見た。エノラは感激のあまり目を潤ませていた。
「わかったよ。僕たちがちゃんと送り届けるからね。」
マイルはテオドラとウェンディに答えた。
二人がにっこりと笑った。
バルタザールは、広間の一角においてあるピアノで小曲を弾き、集まった客の喝采を浴びていた。大きな舞台の後だというのに疲れ一つ見せず、次々上がるリクエストに応えていた。
「レオーネの再来とはよく言ったものだな。」
よく通る低い声が人垣の外側からした。
ピアノを取り巻いていた人々が、はっとして口をつぐんだ。
声がした辺りの人垣が崩れ、ヌメロス帝国司令官ゼノン司令が、つかつかとピアノに歩み寄った。
「若くして謎の失踪をした天才音楽家。君はレオーネを髣髴とさせる音楽家だそうだな。」
ゼノン司令はバルタザールに話し掛けた。
「レオーネとは比べ物にならない未熟者です。」
「謙遜するか。天才とはおのれへの賛辞を欲しいがままにするものだと思っていたぞ。」
ゼノン司令は揶揄するように言った。
「ありがとうございます。」
バルタザールはにこりともせずに答えた。
「このヴェルトルーナでレオーネを知らん者はいないさ。私も若い頃によく聞かされたものだよ。大成していれば世界の音楽史を書き換えただろうにな。」
「・・・・・・。」
どう返答したものか、バルタザールは困惑した。
音楽を志したバルタザールや、レオーネの音楽を愛したカヴァロの人たちなら、彼が若くして謎の失踪を遂げたことは知っている。だが、遠く離れたヌメロスまでそのうわさが飛んでいるとは知らなかった。
「レオーネのことをよくご存知なのですね。」
「む・・・当たり前だ。稀代の演奏家ではないか。」
ゼノン司令はなにやら慌てて言いつくろった。
バルタザールはじっとゼノン司令を見つめていた。そして、穏やかな声で言った。
「何かリクエストがありますか? お好きなレオーネの曲でも。」
「そ、そうだな・・・。」
ゼノン司令は口の中でああでもないこうでもないとつぶやいていたが、すぐにさじを投げてしまった。
「レオーネの曲なら何でもいい。一番得意にしている曲を聞かせてもらおう。」
「承知しました。」
バルタザールは答えて優雅に会釈した。
ゼノン司令はあからさまにほっとした様子であった。
パーティが終わり、ウェンディとテオドラを送ったマイルがホテル・ザ・メリトスに戻ってきたのはとうに日付も変わった頃だった。
「ごめんごめん、すっかり遅くなっちゃったよ。・・・あれ?」
眠りを妨げないようにそっと部屋のドアを開けたマイルは、アヴィンの寝台が空っぽなことに気が付いた。とっくに眠っているだろうと思ったのに、これは予想外であった。
「アヴィン・・・どうしたんだろう。」
マイルはもう一度下の階に降りてみた。
夜の酒場も、この時間はさすがに酔いつぶれた常連客が数組いるだけだった。
その中にアヴィンの姿はない。
もちろんミッシェルの姿も見えなかった。
マイルは、階段の横にある宿屋のカウンターに立ち寄った。
「ねえ、アヴィンが帰ってきたかどうか知らない?」
「あら、見かけなかったわよ。」
受付にいた従業員が答えた。
「そう・・・。」
『まだ出歩いているのかな。それとも・・・僕が遅かったから、ミッシェルさんと一緒にいるのだろうか。』
こんな事なら、ミッシェルの泊まっている宿を教えてもらうのだったとマイルは思った。
アヴィンに気兼ねせずに演奏会を楽しめると、押し付けるように出掛けてしまったのが悔やまれたが、今更どうしようもない。
どちらにせよ、アヴィンが一人でいる事はないだろう。こんな緊張の張り詰めた街にアヴィンを一人で放り出すような事は、ミッシェルもしないはずだ。
「どうしたの?」
従業員が聞いた。
「いや、なんでもないよ。ありがとう。」
「ねえ、貴族様のパーティに行ったんでしょ?『星屑のカンタータ』どうだった?」
「あ、ああ・・・とっても素敵だったよ。じゃ、お休みなさい。」
「あらそれだけ? マイルさんったらぁ!」
後ろで従業員の抗議が上がるのを聞きもせず、マイルは再び部屋に戻った。
『でも、まさか・・・』
部屋に戻り、寝支度をはじめたマイルの胸に不安がよぎった。
あのアヴィンのことだ。一抹の心配がないでもなかった。
『ミッシェルさんが一緒だからって、気が大きくなって・・・夜陰に乗じてカヴァロ市庁舎へ潜入なんて事は・・・。』
アヴィンはともかく、ミッシェルなら不可能な事ではないだろう。
そして、そういう危なげな事であっても、思い付いたら口にしてしまうのがアヴィンという奴なのだ。
『アヴィン・・・大丈夫だろうか。何か無茶な事をしていないだろうか。』
心配しだすときりがなく、マイルは頭を振って自分の想像を追い払った。
「いくらなんでもそんな事はない。ミッシェルさんはこの街の事にはかかわらないって言ったんだ。」
自分を安心させるように口に出して言い、マイルは布団にもぐりこんだ。
「よ、お揃いだな。」
深夜のカヴァロ西街区。ひっそりとした街角に、パルマン隊の四人が集まった。
「遅かったな、ドルク。」
「懐かしくってな。道草食っちまった。」
「よし、大使館へ行くぞ。」
ロッコが先導して、一同はヌメロス大使館へ向かった。
「大使、昨日話していたパルマン隊の仲間です。」
ロッコが三人の仲間を紹介した。
今日は部屋の明かりもかなり落とされ、これが内密の会合であることをはっきりと示していた。
「うむ。諸君に命令が下っていることは昨日聞いた。身の危険が迫るときに、よくカヴァロへ戻ってきてくれた。」
「パルマン隊長のご意志を実行することが、我々の使命です。大使殿には、ぜひとも我々の動きを見守っていただきたい。」
グレイが言った。
「承知している。他言無用に願いたいが、もとより私はヌメロス国の再建こそを願って故国のために働いている。諸君の受けた命令は私が受けたも同然の事だ。」
「そうでしたか・・・。」
ラテルが感動した口調でつぶやいた。
「我が父も同じ事を申しておりました。いつか、軍事帝国ではない、元ののどかなヌメロス国に戻したいと・・・。」
「パルマン様がご自分の立場を明確にされたことで、事態は動きはじめた。この街の解放も、成功を祈っているぞ。」
「そのことなんですが。」
ロッコが言った。
「我々の計画では、ともかく海へ追い立てようと思っています。出来れば、流血は避けたいので。でも、駐屯兵を全員市庁舎から追い出すような手立てが思い付かないんですよ。」
「ほう。」
「お許しをいただければ、直接カヴァロの市長に会いに行って、カヴァロの市民の方から何か大きな揉め事や騒ぎを起こしてもらえないか、頼みたいのですが。」
「・・・本気か、ロッコ。」
「クビにしていただいて、構いません。いえ、その方が有難いくらいです。万が一失敗したときにも、大使が疑われるようにはしたくないのです。」
「その必要はない。私自身、おのれの旗印を掲げたくて仕方がないのだ。君たちくらい、守ってみせよう。カヴァロの市長か。・・・演奏会では話も出来なかったな。パルマン様の紹介状は持っていると言っていたな?」
「はい。」
ラテルが胸のあたりをポンと叩いて見せた。
「では、私からもデミール市長に親書を書こう。何もないよりは、足しになるだろう。」
「ありがとうございます。」
「息の掛かった宿を用意させた。使うといい。その格好は、変えるつもりはないのかね?」
大使は宿の住所を記した紙をロッコに渡した。
四人は互いに笑みを交わした。
「パルマン隊ある限り、これが我々の制服です。」
「よろしい。」
大使はペンを取り上げて、市長宛の親書を書きはじめた。
暗い部屋にペンの走る音が響く。
「そうだ。エキュルの人形技術の高さは知っているかね?」
親書から目を離さずに大使が聞いた。
「有名な工房がありますが・・。」
ロッコが答えた。
「木人兵の改良に、その技術を使う御積りのようだ。兵を向けたと言っていた。急いだ方が良いかも知れんぞ。」
「まるで人のように動くっていう代物の事だな。力任せの木人兵に応用できるのかね。」
ドルクが冷やかすように言った。
「少なくとも動きが早くなればこちらの勝算はかなり下がるだろうな。」
ロッコがいい、グレイが頷いて同調した。
「僕らも急いだ方がいいって事ですね。」
ラテルが確認するように言った。
「そういう事だ。さあ、これを持って行きたまえ。」
大使は封をした親書と金の入った袋を差し出した。
「今後は宿の方に使者を置こう。ここを出たら、表向きはヌメロス大使館も君たちの敵になる。・・ぬかりなくな、成功を祈っている。」
「はい!」
「さて、困りましたね。」
ミッシェルがアヴィンを見つめて言った。
「そこを何とかならないか? いつも居て欲しいとは言っていない。ただ、助言をくれる人が欲しいんだ。俺もマイルもそんな器じゃない。頼れるのはミッシェルさんだけなんだ。」
アヴィンは必死だった。あとに引けないと思っていた。
ミッシェルは思案に暮れる様子で、なかなかいい返事が返ってこなかった。
「あなたたちがカヴァロに残ると決めたとき、手伝えないと言ったはずですよ。」
「それはそうだが・・・。街の状況を把握したら、俺たちのやり方では上手くいかないってわかってきたんだ。」
「カヴァロに何日も滞在していたでしょう? どんな街なのか、調査もしたでしょうに。こう言っては失礼ですが、見通しが甘かったのではありませんか?」
そう言い置いて、ミッシェルは立ち上がった。
「そんな、ミッシェルさん・・・。」
アヴィンは言葉を詰まらせた。
アヴィンはミッシェルと相部屋という条件で泊めてもらえる事になったのだ。しかも、部屋に上がって良いと言われるまでが大変だった。頭のてっぺんからつま先まで、泥臭さがさっぱり洗い流されるまで、宿の女将は首を縦に振らなかった。着ていた物は全て取り上げられた。今頃どこかに干されているだろう。
宿の寝巻き姿で食堂へ降りるわけにも行かず、二人は部屋で食事を取った。
その食器も下げられ、今は酒が一本、栓も開けられぬままテーブルに載っている。
アヴィンはミッシェルに、カヴァロを解放させるまでの手助けを求めたのだ。
ここしばらくの間に、アヴィンとマイルが感じているプレッシャーはどんどん大きくなっていた。それはやはり、得手でないことをやろうと背伸びしているから生まれるのだ。
作戦を練ったり、敵味方の状況を分析したり。そういう緻密な作業は二人には向かなかった。そして、二人が適役として思い浮かべられるのはミッシェルしかいなかったのである。
ミッシェルは荷物入れから地図を取り出した。
テーブルに戻り、酒の盆を寝台に移して地図を広げる。アヴィンが地図を見た。すっかり見慣れたヴェルトルーナの地図だ。ミッシェルはアヴィンの向かいに座り直した。
「あなたに誤解されたくないですから、お話ししますね。」
ミッシェルは地図の上に印を付けはじめた。
「ここがカヴァロ、西へ行くとエキュルの町やジラフの港があります。さらに西へ行くとオースタンの国、トーマスが潜入しているオアシスと、シャヌーン族の村、それにエネドの港があります。」
ジラフとエネドの港、それにエキュルの町に印が付いた。アヴィンは真剣な目で地図を睨んでいた。
「さらに海を挟んで、ここがゲザルクの港。ヌメロス帝国の前線基地です。」
ミッシェルは、ゲザルクの港付近の海にも印を付けた。
「この印の付いた場所全てに、ヌメロスは軍隊を派遣しているんです。」
「えっ!?」
アヴィンは思わず声を上げた。
「これ、全部にか?」
地図の印は広大な範囲に及んでいた。元々のヌメロス帝国の広さの何倍もあるだろう。
「ポルカにも派遣していますから、実際にはもっと多くの兵士がメルヘローズとオースタンへ使わされているんですよ。」
アヴィンはショックだった。ヌメロス帝国の野望が目に見えるような気がした。
それに、その実情を把握しているミッシェルに対しても驚きを隠せなかった。
こんなに詳しく調べるには、一日中転移魔法を使っているのではないか。
カヴァロで休憩をしたら良いなんて、とんだ迷惑な進言だったに違いない。
ミッシェルの魔法のレベルは、アヴィンたちの尺度ではとうてい測れないものだと実感された。
「自国の守りが手薄になるほどの軍隊を動員して、一見、侵略戦争でも始めるのかと思えます。しかし、実際に何が狙いなのかはわかりません。ヌメロス帝国がこれからどう動くか、予断を許さない状況なのです。私はこの動きを見逃したくないんですよ。わかってもらえますか?」
ミッシェルはアヴィンをじっと見つめた。アヴィンは、これ以上自分たちの要望を押し通すことが出来なかった。
アヴィンはしぶしぶうなずいた。
「それで、手伝えないのか・・・。」
「ええ。」
「でも、ヌメロス帝国のゼノン司令はカヴァロにいるんだぞ。」
最後の望みをかけて、アヴィンは声を絞り出した。
「はい。ですから、アヴィンさんたちがカヴァロにいる事は意味があると思っていますよ。」
ミッシェルはさらりと言った。
「俺たちは、ヌメロス軍の見張りで終わりたくないんだ。カヴァロの街を助けたいんだ! ずっと付いていてくれなんて言わないから、参謀役に・・・。」
「くどいですよ、アヴィンさん。」
ミッシェルが、アヴィンをさえぎって言った。
「!!」
アヴィンは言葉を失った。ミッシェルは普段と変わらない顔つきだった。さすがに目元にはいつもの微笑がなかったけれど。
「あなたにわかってもらう為には、こういう言い方をした方が良いのかな。今の私には、カヴァロの行く末を考える余裕がありません。もっと大元にある、ヌメロス帝国本体の動きが私の懸念をかき立てているんです。」
「悪しき波動・・か?」
アヴィンは聞いた。ミッシェルはうなずいた。
「リュトム島の事件やカヴァロの占領は、世界を制覇しようとする動きだと思います。しかし、アリアさんを拉致する理由がわからない。胸騒ぎを覚えるのはそこなんです。」
ミッシェルはアヴィンが理解したか確かめるようにゆっくりと言った。
「それに、アリアさんも古い因習にからめ捕られた人です。彼女の一族はこの件に関する秘密を握っているはず・・・。それも知りたい事ですし、ヌメロスが何をどこまで押さえているかも不明です。それらに比べたら、カヴァロの事は些細なことです。」
アヴィンが何かを思いつめる顔つきになっていた。ミッシェルは続けた。
「カヴァロの街の人たちが本気になって立ち上がれば、道が開けるのではないですか? 彼らはまだ、持てる力の全てを出し切っていないと思いますよ。」
「そ、それは・・・。」
アヴィンは頭に血が上った。怒りではなくて、自分が情けなくて、はずかしくて。
今までミッシェルに断られることなど殆どなかったから、聞き届けられて当たり前だと錯覚していた。まだ、カヴァロの人たちに、自分たちの苦しささえ打ち明けていないじゃないか。まだ、出来ることがあるじゃないか。ミッシェルを頼るのは、もっと切羽詰ってからでいい。
「わかった。・・・ありがとう。」
アヴィンは半ば放心して言った。
「わかってもらえて嬉しいですよ。お互い、頑張りましょう。」
ミッシェルは地図をしまい込み、机の上の明かりを絞った。
「さあ、もう休みましょう。明日は早く発ちたいんです。」
ミッシェルに追い立てられ、アヴィンは自分の寝台に横になった。
『成果なしで戻るのか・・・。』
あきらめたとはいえ、惜しい気持ちまで消えたわけではない。
深いため息がアヴィンの口をついて出た。